デンマークの古城【クロンボー城】

Pocket



クロンボー城

シェークスピアの戯曲、「ハムレット」に登場する城の舞台になった古城

クロンボー城

中世の城郭と煉瓦造りの重厚な北欧ルネサンス様式の傑作

 

国名/所在地

デンマーク王国/コペンハーゲン 北方30km シェラン島 ヘルシンゲル

 

概要

15世紀にカルマ同盟(✽1)の盟主となったエーリク七世が砦を築きました。ここは1857年まで、エーレスンド海峡通行税の微収拠点となっていました。北欧統一の中、疲弊した経済を立て直すための政策の一つとして、また海峡の防衛のためとも言われています。

エーレスンド海峡の最狭の場所を選び、鉤(カギ)のような格好で海峡に乗り出していたので、「Krongen (クローゲン)」と呼ばれていました。その後、大改造が行われ外縁部に四つの塔を備えたルネサンス様式へと移り変わっていきました。この頃から「クロンボー」と呼ばれるようになります。

♔デンマーク語では、クロンボーの”ボー”は”城”という意味なので、現地の人は「クロンボー」と呼ぶそうです。

17世紀に入るとお城は火災と戦争で何度も改修されていきます。現在は創建当時の面影はほとんど残されていません。

中庭を囲むようにしてお城はロの字型に建てられており、外観が異なる4基の塔が特徴的な古城と言えます。

 

建築様式

ルネサンス様式、バロック様式

 

建設の歴史

1426年、カルマ同盟を結んだ3国(デンマーク、スウェーデン、ノルウェー)を支配していたデンマーク王ポメラニア公エーリク七世によって、前身になる砦【クローゲン(krogen)】を築きます。

1574年~1584年、要塞機能の強化と王宮としての機能も兼ねてフレデリク2世の命により、大改造が行われました。三階建ての四方は翼廊(よくろう)(✽2)に囲まれ、四つの塔を備えたルネサンス様式の造りになっています。城内で一番高い塔は62mに及ぶとされています。

1629年、頑丈なアーチのおかげか礼拝堂のみを残し、失火により城の大半を焼失させてしまいます。クリスチャン4世は、渋る王国評議会を説得し通行税の増税をして、1631年にお城の修復を実施しました。

より防御力の強化が図られ、また城内の改修もされ初期のバロック様式が導入されました。今も残る天井画はこの時描かれたものだとされています。

1658年、対スウェーデン戦争が起こり、3週間にわたる攻撃を受け落城します。

17世紀末スウェーデン勢がお城を放棄した後、敗戦を教訓とし城砦は拡張整備をします。また、お城の外郭を強化する工事が行われました。

1760~1763年、フレデリク5世が使用するためにと、北側の翼廊が改修されたものの王が居住することはありませんでした。

1785年~1922年、一世紀以上にわたりクロンボー城は兵舎として使用されていました。その為城館は改修や損傷を繰り返します。

1923年~1934年、文化財としての価値に目覚めた政府は、兵舎としての使用を止めて復原するための修理を行います。11年の歳月をかけて現在のクロンボー城の姿となりました。

♔2000年にユネスコ世界文化遺産に登録されています。

 

城内の見所

北棟・・・王の住居。王の肖像画が架かる白い壁。ロココ調の天井画を施しています。

西棟・・・王妃の住居。給仕をする女官の人形やオランダ製のタペストリーが飾られています。

東棟・・・王族の部屋と厨房

南棟・・・教会

「騎士の間」・・・北欧最大のホールといわれます。市松模様の床と絵画コレクションなど。

 

シェークスピアの『戯曲』に登場!

かの有名な劇作家シェークスピアの四大悲劇のうちの一つ、『ハムレット』に登場する「エルシノアの城」のモデルとして知られています。しかしシェークスピア自身はこの城を訪れたことはないそうです。クロンボー城の城壁にシェークスピアの石版があります。毎年夏には広い中庭でシェークスピアの野外劇が上演されています。

♔ヘルシンゲル=(イコール)エルシノア(英名)なんですね( ̄∀ ̄) 劇中の中のお城はゴシック様式なんですが、実際はルネサンス様式・・・実はクロンボー城の前身、14世紀頃の城塞はゴシック様式だったとか。

 

地下牢に眠る伝説の英雄!『ホルガー・ダンスク』

デンマークの伝説上の英雄、『ホルガー・ダンスク』。お城の薄暗い地下牢で眠っているが、国家の危難の際に目覚め敵を倒してくれると言われています。(フランス語で『オジェ・ル・ダノワ』といい、中世フランスの武勲詩に登場するデンマークの王子。)

 

まとめ・感想

クロンボー城を一目見たとき(写真でね)一番印象に残ったのが四つの塔です。八角塔の形や尖った屋根などは、デンマークの城郭や城館でよく見られるそうです。しかし、改修や増築を繰り返しているうちに、創建当時の面影がない!といわれると、どんな城郭だったのかが気になりますね(^_^)

 

✽ 14世紀にノルウェーとスウェーデンを併合。三国が同じ王のもと統一を達成。この同盟の名称。その中心人物となっていたのは、マルグレーテ一世。デンマーク王女であり、かつてのノルウェーとスウェーデンの王妃でもありました。1523年にスウェーデンが離脱。ノルウェーを奪われ衰退していき、現在のデンマーク王国となりました。

✽2 キリスト教聖堂の一部。身廊と内陣との間に交差して置かれる廊の、左右に張り出した部分。

 

参考資料:世界の城郭 ドイツ・北欧・東欧の古城/太田静六 著/㈱吉川弘文館(新装版)2010年

参考資料:歴史的古城を読み解く/マルコム・ヒスロップ著/㈱ガイアブックス/2014年

Pocket

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です