ダラム城と大聖堂
durham castle (source URL:Pixabay)
durham cathedral (source URL:Pixabay)
映画『ハリー・ポッター』のロケ地として使用されたイギリス北東部のダラムにある、ノルマン様式のダラム城と大聖堂は、U字型のウェア川に囲まれた丘の上に建つ【世界遺産】です。
国名 / 所在地
イギリス (イングランド)/ イングランド北東部、ダラム州、ダラム
※正式名称:グレートブリテン及び北アイルランド連合王国
概要
ダラム城は、スコットランドの境界線近くの町ダラムに、かつてイングランドを征服したウィリアム1世(ノルマンディー公ギョーム2世)が建てた城塞です。また、パレス・グリーン(緑地)を挟んだ向かい側には【ダラム大聖堂】があります。当時、国境警備を担っていた歴代の大司教たちは国王と同等の権利を持っており、ダラム城で暮らしていました。※領主司教=プリンス・ビショップと呼ばれていました。
建築様式
ノルマン様式(ロマネスク様式)、モット・アンド・ベイリー様式、ゴシック様式
♔ヨーロッパでのロマネスク様式は、イギリスでは、ノルマン様式と呼ばれています。ノルマン人(ヴァイキング・デンマークを原住地としたゲルマン人)によって、11世紀末頃からフランス北西部のノルマンディー地方で始まり、イングランドで広まったロマネスク美術様式のひとつです。
建設の歴史
ダラム城
1072年、イングランドの征服王ウィリアム1世によって建設され、ウォルシャー司教に与えられます。
1345年~1381年にかけて八角形の天守が改装されます。
1837年以降、主教エドワード・マルトビーが学生のための住居としてとダラム大学へ寄付します。
1840年、増える学生たちに対応するため、要塞部分が建築家アンソニー・Salvinによって再建され、学生の大多数がそこで生活しています。
ダラム大聖堂
1093年にこの地の最初の領主司教ウィリアム・オブ・セント・カリレフによって建設が始まり、彼の死後は、後継者ラヌルフ・フランバードに引き継がれ完成させます。
ノルマン様式の教会として当時では、ヨーロッパにおいて最も精巧な最先端技術のリブ・ヴォールト構造を使用しています。15世紀に現在の姿になりました。
この大聖堂では、教会の建物とリンデスファーン島(イングランド北部ノーザンブリアの沖にある島)の聖人カスバート(リンデスファーン島の修道院院長で数々の奇跡を起こしたとされる聖人)の聖遺品を所有。
さらに、セント・オズワルド・オブ・ノーザンブリア(オズワルド王)(キリスト教を広めた王)の頭部と、聖ベーダ(イングランドとキリスト教の歴史を【イギリス教会史】にまとめた司祭)の遺体が安置されています。
♔ノーザンブリアとはイングランド最北の地。
1986年、ダラム城及び、ダラム大聖堂は共に世界文化遺産に登録されています。
ダラム城は学生寮兼イベント会場
ダラム城は大学寮とは言っても、さまざまな催しが行われているため、外部からの参加も出来ます。演劇、コンサート、展示会なども不定期に開催。
ガイド付きツアーで城内を見学する事も可能です。また、結婚披露宴の会場としても使用されるため、宿泊施設の利用も出来ます。※学生寮のため非公開日も何かと多いらしいので、事前の確認を忘れずに!
ダラム城の見所
Gatehouse(ゲートハウス)・・・18世紀にバーリントン司教のため、建築家ジェームズ・ワイアットによってゴシック様式に改築されています。
The Keep(要塞タワー)・・・ハットフィールド司教により、14世紀に建設。八角形の形により防御力が強化されます。しかし、次第に要塞から宮殿へ移行し、Keepの重要性が無くなります。
その後、1837年に大学の宿泊施設となり、さらに増える学生たちに対応するため再建されています。
The Norman Chapel(ノルマン礼拝堂)・・・ダラム市最古(1078年頃創建)の建物。この教会の内部にある彫刻は珍しい装飾が無傷で残されています。
The Tunstall Chapel (タンストール礼拝堂)・・・1540年に創建。カスバート・タンストール司教にちなんでこの名前が付けられました。ノルマン礼拝堂よりも大きな礼拝堂です。
17世紀にジョン・コジン司教とクルー司教が拡張し、後方には【特免室】と呼ばれる飲食が許される場所があります。
The Black Staircase(黒い階段)・・・17世紀、コジン司教によって創建。コジン司教はイギリス内戦後に司教を受け継いでいます。【黒い階段】とありますが、実際は濃い茶色です。
この階段は片側を壁に埋め込まれた設計になっているため、重量が偏向し傾いています。そのため、木製の支柱を入れて安定させています。
The Courtyard(中庭)・・・この中庭では、多数の紋章が見られます。これはひとつの一族のお城ではなく、歴代の司教たちの住居だったためだと言われています。
おまけ・・・出入り口の両サイドに一部のみ白色ペンキで塗られています。それはいわゆる【伝統】にもなっているようで、ことの始まりは第二次世界大戦中でした。
夜の消灯時間に入口を見つけやすくするのが目的だったとされます。
本来入口だけで良いはずでしたが、なぜか1ヶ所だけ窓にこの白いペンキが同じ様に塗られています。どうやら誤って塗ったのだろうとされていますが、こちらを訪れた際に是非、この窓を探して見てくださいo(^▽^)o
♔ダラム城のツアーで見学出来るのはノルマン、タンストール礼拝堂の二つと、タンストール・ギャラリー、黒い階段、ダイニング・ホールです。
ダラム大聖堂はゴシック建築の先駆け
現在オックスフォード大学、ケンブリッジ大学に次いで古い伝統を持つと言われている、イギリスを代表する【ダラム大学】の起源となるダラム大聖堂は、司教がその地を統治していた事から権力と共に、豊かな財力もありました。
また、ノルマン様式で建築された大聖堂ですが、12世紀の後半頃から盛んになったゴシック建築の先駆けと言われています。(随所にゴシック様式が見られるそうです。)
ノルマン様式とは、ヨーロッパでいうロマネスク様式であり、教会堂建築を中心とした建築様式の一つです。
この大聖堂は、建築様式に少しでも興味があればとても惹かれる建物であることは間違いありません。
ダラム大聖堂の見所
The Central Tower(中央塔)・・・13世紀後半に落雷にあい、1429年に修復。その30年後に再び落雷に遭います。
♔2度も落雷に遭うってある意味凄い(^_^;)
1465年~1474年、新タワーを建設。さらに2階を増改築しています。
Great Kitchen(グレートキッチン)・・・1366年~1374年に建てられたキッチン。10世紀のスペイン・コルドバの大モスクで見られる建設技術で、八角形のリブアーチ型天井は必見だそうです!
Sanctuary Knocker(サンクチュアリ・ノッカー)・・・大聖堂の北側入口の扉に聖域(サンクチュアリ)ノッカーがあります。
その脇にある説明書によると、中世の時代大聖堂では罪人庇護権が認められていて、このノッカーを叩き庇護を求める罪人には、追っても手が出せなかったそうです。
そして、37日間の聖域(猶予)が与えられた罪人は、裁判(和解)か国外追放(脱出)の、どちらかを選択しなければならなかったそうです。
今現在、このノッカーはレプリカで本物は宝物展示室で見る事が出来ます。
※1624年にこの権利は廃止されています。
Cloister(回廊)・・・映画『ハリー・ポッター』の撮影で使われていた回廊。ヒュー・ル・Puiset司教によって12世紀後半に建設。
15世紀に改装され現在の姿になったのは18世紀(1764年~1769年)。
この回廊は、中世の頃の僧侶たちにとって重要な場所であったようです。
大聖堂は常に暗く、瞑想や勉強、書物などを読み書きするための光を取り込む回廊は、うってつけの場所だったようです。
※ダラム大聖堂内部は撮影禁止。回廊のみ可能です。
まとめ・感想
ダラム城と大聖堂は、基本ノルマン様式(ロマネスク様式)で建てられていますが、随所にゴシック様式の要素が見られるので、かなり個人的に好きな建物です。
今のところ、ダラム大聖堂の回廊が一番惹かれています。中庭に面したアーチはとても雰囲気があり資料写真などを見ても、その美しさが伝わってきます。
残念ながら『ハリー・ポッター』は未見なので、この回廊見たさに機会があれば観てみようかしら(^_^)
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